お前の未来を選べ!
※写真は「みあ」
ハロウィンの夜のことだった。ここ数年来の仮装ブームの喧騒の中、私は残業を終えて帰路についていた。あまりにも混雑する雑踏は苦手だが、平穏な日常に少しばかりの賑やかさをあたえてくれる、そんな日は嫌いではなかった。そう、少しばかりの刺激ならば。
妻が待つはずの自宅に帰ると、そこに妻の姿はなかった。夜分に妻が連絡もなく、いないことなど結婚して一年で初めてのことだった。買い物か友人と食事していて携帯の電源でも切れたかとタカをくくっていたが、結局その日、妻は帰っては来なかった。
そしてそれから一週間。妻は帰らずに音信不通のままだ。もちろん手は尽くした。ありとあらゆる連絡先や、妻が立ち寄りそうな場所をできるかぎり探し廻った。それでも私には手掛かり一つ掴むことができなかった。困り果てた私が頼ったのが、興信所への依頼であった。その興信所から今日、頼んだ妻の調査報告書が届いた。厳重に封書された書類を開封して、はやる気持ちを抑えながら私はゆっくりと妻の報告書に目を通した。
そこに書かれていたことはにわかには信じがたい事実だった!なんと妻が半年前から本千葉のデリヘルで働いていたこと。ストーカー被害にあっていたこと。彼氏と呼んでもおかしくない人物がいたこと。
『・・・嘘だろ!?』『そんなわけが・・・』静寂に包まれた一人きりの部屋で、私はあまりの驚きと予想すらしなかった出来事に気が動転していた。『本千葉のデリヘルだと!?』妻には十分な生活費を渡していたし、夫婦仲が冷え切っていたこともない。では何故、妻が風俗で働く必要があったのだろうか。慌てて再び報告書に目をやる。本千葉のデリヘル。そこは私が会社の納会やゴルフの接待の帰りがけに何度か利用したことがある店だったのだ。
何故!?どうして!?何が理由で!?次から次へと頭の中に浮かぶ疑問。答えの出ることのない懐疑。妻の安否と残された謎。そして、一人、なにもかも、すべてから取り残された私がいた。
次の日、私は一つの決心を固めていた。報告書の最後にはこう記されていた。
≪奥様は事件や事故に巻き込まれた可能性も否定はできません。しかしながら、我々の調査では奥様が自ら計画的に姿を消された可能性が高いとみております。≫
私自身がこの謎を追わなければならない。妻をなんとしても見つけなければならない。まずは本千葉のデリヘルに足を運ぶ事にしたのだ。